高橋彩華プロが海外メジャー初挑戦の全米女子オープンで11位タイに入る大健闘! 世界最難関のトーナメントを戦い終えた高橋プロに手ごたえを語ってもらいました。
——全米女子オープン、ナイスプレーでした!
「ありがとうございます!」
——全米女子オープンに出場できることを知ったのはいつだったのでしょうか?
「(大王製紙)エリエールレディスの週にお父さんから聞きました」
——全米女子オープンに出場できると思っていましたか?
「いや、まったく意識していませんでした。自分には関係ないことだと思っていて、まさか(出場権が)下りてくるとは、という感じでしたね」
全米女子オープンは毎年6月に開催されるが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で12月に延期。従来は米国を中心に世界各地で予選会が行われていたが、今回は各主要ツアーの上位者や直近の成績などで出場者を決定した。
156人に満たない分は11月9日付のロレックス・ランキング(女子ゴルフ世界ランキング)で出場者を決めた。高橋プロの11月9日付のランキングは142位。コロナ禍での開催ということで上位者の欠場などもあり、出場権が下りてきた。
——米国での試合はアマチュア時代を含めて経験はありましたか?
「いや、初めてです。海外の試合に出場したことはアマチュア時代に何度かありましたが、米国本土に行くのはプライベートも含めて今回が初めてでした」
——渡米したのはいつですか?
「(大会4日前の)12月6日です。お父さんと2人で渡米して、キャディさんは後から合流しました。着いたその日にコースへ行き、ハーフだけ練習ラウンドを回りました。その後、大会前日までに全部で3ラウンドしました」
今年の全米女子オープンの舞台はテキサス州チャンピオンズゴルフクラブ。そして今回は12月開催で日照時間が短いため、大会史上初めて予選ラウンドで2コースが使用された。決勝ラウンドでも使用されるサイプレスクリークコースと、予選ラウンドのみで使用されるジャックラビットコースだ。
——練習ラウンドしたときのコースの印象はどうでしたか?
「距離がすごく長いなと思いました。長くて難しいコースという印象でした」
サイプレスクリークコースは6731ヤード、パー71。ジャックラビットコースは6552ヤード、パー71。パー5が3ホールずつしかないのに、総距離がここまで長いコースは日本ツアーではなかなかない。
——練習ラウンドを終えて、本番での目標スコアをどのように設定しましたか?
「スコアというよりも、1打1打で自分のベストを尽くそうという目標を立てました」
高橋プロの初日のラウンドはジャックラビットコースの1番スタート。スタートホールでバーディを奪ったが、その後は一進一退の攻防。3バーディ、5ボギーの2オーバー73で、首位と6打差の55位タイで終えた。
「初日は緊張してガチガチで、自分らしいショットがあまり打てなくてバタバタした感じでした。でも、その中で予選通過ラインに残れたのはよかったなと思いました」
2日目はサイプレスクリークコースの10番スタート。11番パー4でボギーが先行する苦しい立ち上がりだったが、2バーディ、3ボギーの1オーバー72とスコアをまとめ、通算3オーバー47位タイのカットラインギリギリで予選通過を果たした。
「2日目はラスト5ホールくらいになってからリーダーボードが目に入り、カットラインが3オーバーと知って、そこからけっこう緊張しました。最終ホールの9番パー5のパーパットは1.5メートルくらい残っていて、入れたら予選通過で、外したら予選落ちだと分かっていたので、すごく緊張しました。入ったときはホッとしましたね」
見事に予選を通過して迎えた3日目のラウンドは、再びサイプレスクリークコースの10番スタート。この日も15番パー4でボギーが先行する厳しい流れだったが、最終9番パー5でバーディを奪い、1バーディ、2ボギーの1オーバー72。2日目と同じスコアだったが、順位は47位タイから25位タイへとジャンプアップした。
「3日目はピンポジションがすごく難しいところばかりで、しかも当日の朝まで雨が降っていて地面が柔らかかったので、ランが出なかったぶん距離が残りました。パーを取るのが精いっぱいというセッティングの中で、うまくパーを拾いながら耐えられたなという感じのラウンドでした」
高橋プロの2日目のドライビングディスタンスは243ヤードだったが、3日目は227ヤード。コースコンディションが飛距離にどれだけ影響を及ぼしたかが分かる。
最終日はサイプレスクリークコースの1番ホールを7時45分にティオフするトップスタートだった。だが、5番パー5をホールアウトした時点で悪天候のため中断。そのまま翌日に順延となった。
「最終日は1番でバーディが取れて、2番はボギーでしたけど3番でバーディを取り返し、けっこう調子がよかったので、できればその日のうちにラウンドしてしまいたかったです。でも、雨がすごくてコースが荒れてしまったので、しょうがなかったですね」
残り13ホールは翌日に持ち越しとなったが、順延になった時点でスコアを一つ伸ばし、通算3オーバー暫定19位タイに順位を上げた。
「来年の出場権(10位タイ以内)が見える位置まで来たので、取れたらいいなという気持ちはありました」
仕切り直しとなった最終日はトップテン入りを目指してプレーしたが、簡単にスコアを伸ばせるコースではない。7番から10番の4ホールでスコアを3つ落としたが、12番パー3と18番パー4でバーディを取り返し、最終ラウンドのスコアは4バーディ、4ボギーのイーブンパー71。通算4オーバー11位タイでフィニッシュした。
「ホールアウトした時点では13位くらいだったので、あとは周りの選手次第ということで待っていたんですけど、結果的に1打足りませんでした。でも、あの難しいコースに対して自分のベストは出し尽くしたので、悔いの残らないラウンドでした」
来年の出場権は獲得できなかったが、この試合で獲得した賞金は12万6465ドル。日本円に換算すると約1300万円だ。
「賞金は歴代最高獲得額なので、それはけっこううれしかったですね」
——全米女子オープンを戦い終えて、2020年シーズンの全日程が終了しましたが、今年はどんな1年でしたか?
「今年はゴルフの調子があまりかみ合わず、自分の納得するゴルフができなかったんですけど、その中でもシード圏内の50位以内(賞金ランキング42位)に入ることができたのはよかったかなと思います。最終戦の(大王製紙)エリエールレディスでやっといい感じになってきたのですが、そこで終わってしまったので、いい波に乗るのが遅かったです」
——その反省も踏まえ、2021年シーズンに向けてどんな準備をしますか?
「このオフはスイングの効率性を上げる練習と、あとは飛距離アップに重点を置いて準備をします。海外で合宿を行うのが難しい状況なので、国内のどこかで合宿を行い、来年こそは初優勝を挙げたいです」
2020年シーズン終了時点の高橋プロの年間獲得賞金は1249万5650円で、賞金ランキングは42位。2019年シーズンの賞金ランキング19位に比べたら物足りないかもしれないが、全米女子オープンでの活躍によりメルセデス・ランキングのポイントが加算され、こちらのランキングは21位にジャンプアップした。今シーズンからメルセデス・ランキングの上位50位以内にも翌シーズンのシード権が付与される。
2021年シーズンは全米女子オープンで手にした自信を武器に、念願の初優勝を目指して思いきりのいいプレーを見せてくれるはずだ。